top of page

               『ラグナロク(脳内)オンライン』


               ディバインプロテクションLv10

                  アコたんVSショタ


  プロンテラ大聖堂といえば、ミドガルド大陸に根付いた人々にとって――少なくともルーン
 ミドガツ王国に居を構える人々にとって――王の居城にも等しく重要な施設のひとつに違いな
 かった。殊に、天変地異が相次ぎ、魔物の跳梁跋扈が噂される時世にあっては、その感は一層
 の切実さを備えて人々の胸中に刻み込まれていた。
  首都プロンテラに聳え建つ尖塔に、荘厳な壁面に、落ち着いた佇まいに、人々は明日の平穏
 を祈っては安眠の床につき、今日の希望を願っては働き出すのだった。そこに過ぎ去った日々
 に対する感謝という二文字が決して含まれていないことに気づきもしないまま。
  もちろんそんな不義理に公然と目くじらを立てるような教会関係者はいなかった。聖職者と
 いう肩書きと信仰心が、たとえ腹中に人間としての鬱憤がとぐろを巻こうとも、それを表面に
 噴出させることを防いでいたからだ。
  だが中には、およそ肩書きや信仰心とは無縁の者も、いるには、いた。
  彼女がプロンテラ大聖堂にやって来たのは一年前のことだった。ここを訪れる者は、善しに
 つけ悪しきにつけ、必ず何かしらの決意を持ってその門を叩く。ところが彼女には、そんなも
 のはこれっぽっちも存在しなかった。強いていえば成り行きである。幼少のころからつきまと
 ってきた優しい娘だという風評は、いつの間にか彼女を、生まれ育った港街アルベルタから、
 プロンテラ大聖堂へと押し流してきたのだ。
  確たる信念も信仰心も持たず、それでも気がつけば服事となって聖職に従事する身となって
 いたことを、だから彼女はちっとも悔やんだりはしていなかった。もちろんこれは服事として
 はいただけない話だったが、とある神父が彼女をして、極めて非公式にではあるが、彼女こそ
 真の聖職者だと述べたことがあるというのがもっぱらの噂だった。なんとならば、神には信仰
 心もなければ義務感もなく、ただ無償の愛を垂れたもうからに他ならない。
  この点で、彼女が布教活動にも参加せず、困難にあえぐ人々に力を貸すこともなく、ただ大
 聖堂の雑事をこなすことだけに身を委ねていることは、妥当ともいえるし、損失であるともい
 えただろう。とはいえ、どちらにしても、彼女の存在がまるで無駄だということは決してなか
 った。いまや彼女なしでは大聖堂に身を置く人々の生活は成り立たない。心に悩みをもって訪
 れる人々も、彼女と何気ない日常会話を交わすだけでその顔に微笑みを取り戻す。
  どうあれ、教会関係者の間に知れ渡った噂は、いまや確信に変わりつつあった――。



  昼下がりのこの時間が、彼女は好きだった。一日の中で最もではないにしろ、なくてはなら
 ない時間だった。
  大聖堂の裏手を抜ける風は心地よく渇き、芝生に柔らかく降り注ぐ陽光は暖かい。僅かに西
 に傾いた太陽と巨大な尖塔が描き出す日陰に身を寄せれば、そこはひんやりとした涼感に満ち
 ている。
  なにより、静かだった。雑踏の見本市でもしているようなプロンテラの狂騒の中にあって、
 ぐるり街を取り囲む城壁と大聖堂に挟まれた神聖な空間には滅多に人も入り込まず、常に厳か
 な静寂が横たわっているのだ。
  といって、人目につかないのをいいことに、彼女が己の職務に不誠実であるということはま
 ったくない。大聖堂縁の『聖人』たちの眠る墓所。そこを清潔に保つという日々の職務に、い
 まも彼女は忠実だ。
  墓石を清め、雑草を抜き、青空を見上げてしばらく――。うっすらと額に光る汗を拭い、彼
 女は日陰へと入って、ちょこんとその場に腰を下ろした。そう広い空間ではないとはいえ、一
 人きりですべてを賄うには数度の休憩が必要だった。
  飛び行く親子連れの――彼女はそう思った――鳥をにこにこと見送り、返す視線の先に小さ
 な人影を認めたのは、風がすっかり汗を乾かした頃合いのことだ。
  見知った顔だった。幾度か会話を交わしたことのある少年は、しかし、ぐっと唇を噛み締め
 たまま、彼女に涙混じりの視線を送っていた。どうやら彼女が気づくより先に、彼の方は彼女
 に気づいていたらしい。
 「どうしましたか?」
  まだ少女の面影が残る柔らかな声で彼女がそう問いかけたのは当然として、それでも少年は
 沈黙を守っていた。いや、よく見れば、なにがそうさせるのか、小さな肩まで震わせて、いま
 にも声を上げて泣き出しそうですらある。
 「どうしたんですか?」
  やっと十歳になったばかりの少年は、再び向けられた同じ問い掛けにぽろりと涙を零し、ご
 しごしと掌でそれを拭った。利発そうな顔立ちをした線の細い華奢な少年は、それだけに痛々
 しく彼女の瞳に映った。
  ゆっくりと歩み寄り、彼女はそっと腰を折って、俯いたままの顔を覗き込む。
 「なぜ泣いているの――」
 「ぼく――」
  突然顔を上げ、三度目の問い掛けを遮った少年の声は、涙に詰まって途切れ果てた。
 「ぼく……」
  また涙が零れた。
  彼女は、少年の顔が真っ赤に上気していることに気づいた。
  熱でもあるのかと不安になったその時。
 「ぼくっ!」
 「きゃ……」
  思いのほか力強くがっしりと抱き締められ、彼女は慌てて両足を踏ん張った。
 「ぼく――ぼく――」
  繰り返しながら、少年は力いっぱい彼女の身体を抱き締める。とはいえ、小さな少年では到
 底ふかふかと柔らかい女性の身体を椀中に収めることはかなわず、有体にいって、どうやらそ
 れはしがみついているといったところだった。
  彼女は当惑していたが、だからといって少年の腕を振り解こうとはしなかった。小さな幼い
 異性の力強さを、自分でも意識しないまま心地よいと感じ、なにやら甘酸っぱい切なさが胸中
 に満ちるのを、なぜだろうと考えていたからだ。
  少年の息が荒い。
  時折、ぴくんと震えては小さな声すら漏らす。
 「おねえちゃん……ぼく……ぼく……」
  あ、とも、う、ともつかない呻き声の合間に、少年は奇妙に身体を蠢かせていた。
  動きの中心は腰にあった。
  円を描くように、左右に擦りつけるように、前後に押しつけるように。
  こり、と当たるものを感じて、彼女はなにかしらと訝った。
  太腿の辺り、布地の向こう側に感じる物体は硬く、しかし柔らかい。
  少年の腰の動きに反応して、それはこりこりとよく躍った。
  胸が高鳴るのを感じた。
  かあっと頬が熱くなった。
 「あ……」
  一声もらした彼女は、実のところ自らの身体が示す反応に戸惑っていた。
  そこになにがあるのかは知っていた。
  しかしそれが何を意味するのかがわからない。
 「おねえちゃん! おねえちゃん! おねえちゃん!」
  少年の律動が大きくなった。
 「う~~~ッ!」
  彼女の腹部に顔を押し付けて唸る。
  熱い吐息と篭った声がじんわり染み渡る。
  少年の動きに翻弄され、やがてぴったりと密着した二人の身体は共に激しく揺れた。
  最後の瞬間、少年は死の間際に見せるような力で彼女の柔らかい身体を締め上げた。
 「き、きもちいいっ――」
  そう叫んだかと思うと、こっけいなほど必死にしがみついた身体を小刻みに痙攣させ、それ
 からぐったりとその場にくず折れた。
  肩で息をする少年を見下ろしながら、彼女は呆としていた。
  太腿にぴくぴくと嬉しそうに弾んでいた感触が残っている。
  少年は、きもちいいと叫んでいた。
  彼女にはその感覚が、なんとなく理解できた。
  自分の下腹部に、もどかしいような疼きが潜んでいる。
  少年の言葉とその疼きは、極近いところで繋がっているような気がした。
  気がつくと、少年はさめざめと泣いていた。
  地面に伏せたまま、背中を震わせて泣いていた。
 「あ、の……」
  遥かに年下の少年に、彼女はどう声をかけていいのかわからなかった。いましがた行われた
 行為が、なにか秘密めいたことであるのは間違いない。だから、それに触れていいものやらど
 うなのかの判断がつかなかった。それでいて少年の胸中をかき乱している原因がそこにあるこ
 とも間違いないとわかっているのだから、これはもう処置なしである。
  突然、少年ががばりと立ち上がった。
 「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」
  ただひたすらに頭を下げる。
 「誰にもいわないで、誰にも!」
  しゃくりあげながら哀願する。
 「あの、ええと……」
 「精子がいけないんだよ、精子が! 出しても出しても勝手に溜まって、そうするとぼく、も
 うダメなんだよ! 女の人に会いたくて仕方なくなっちゃうんだよ! せ、精子が、精子がぼ
 くをおかしくしちゃうんだよ!」
  少年は身を捩らんばかりに弁明した。
  が、彼女の方はきょとんとするしかない。
 「あの……? え……? せえし、ですか……?」
  必死に考えるが、どうしても少年の言葉が理解できない。
  それが、ああ、と手を打ったのは、しばらく頭を捻った挙句のことだ。
 「精子、ですね? 男の方の、赤ちゃんのもと!」
  かつて先輩の服事が、まるで物事に疎い彼女を知って驚きつつ、照れくさそうに、それでも
 これは大事なことだからと教えてくれた事象が、ようやく結像したのである。女性の身体に起
 きる変化、男性の身体におきる変化、そのふたつが重なり合ったときに、命が誕生する。なん
 となく容認していた自身の身体におこった変化にそのような意味があるということを聴かされ、
 なんとすばらしいことなのかと感動すら覚えた事象だ。
  でも――。
 「あの、どうして精子が溜まると女の人に会いたくなるんですか……?」
  それがいまひとつわからなかった。自身の身体に変化が訪れてから後、彼女は男性に会いた
 いなどと思ったことはなかった。男性女性、そのどちらにも平等に訪れる変化に、違いがある
 とは思えない。
 「わかんないよ、わかんないから困るんだよ! 我慢できなくなるから、だから毎日毎日ちゃ
 んと出してたけど、でもやっぱり我慢できなくて、それでおねえちゃんに――」
 「わたしに……?」
 「おねえちゃんに会いにきたけど、でもどうしていいかわからなくて、だからあんなことしち
 ゃったんだよ!」
 「さっき、あの、精子を出していたんですか?」
 「だって出ちゃったんだもん!」
 「女の人に会って、精子を出して、それでもまだだめなんですか?」
 「わかんないよ! わかんないけどまだダメだよ!」
  少年は叫ぶなり、思い切りよく着衣をするりと脱ぎ捨ててしまった。
 「ほら、まだこんなだよ、まだ!」
 「うわ、あ……」
  彼女は眼を奪われた。
  ちょこんと可愛らしく立ちあがった少年のそこはすっぽりと包皮に覆われて、白濁した液体
 にまみれて濡れ光っていた。
 「精子……?」
  また奇妙な胸の高鳴り。
  下腹部で、なにかがぞろりと蠢いた。
 「出してるのに、いつもちゃんと出してるのに!」
 「あの、どうやっててですか……?」
 「ちんちんをいじるんだよ、こうやって!」
  感情の昂ぶりがそうさせるのか、少年はもはや怒鳴りつけるように言い捨てて、小さなそれ
 をちょこんと摘むと、健気に擦りはじめた。まとわりついた精液がぬめり、時折指があらぬ方
 向へと導かれる。そのたびに白い突起物はくるくるとよく動き、表面を滑る包皮はそれでも内
 容物を隠したまま弛んでいた。見るからに硬そうなそれとは相容れない眺めだった。
 「まあ……」
  彼女は我知らずに呟いて、口元に手を当てた。ぽうっと桜色に染まった熱に戸惑っていた。
  少年は一心不乱にしごきつづけ、じっと己の手の動きを見詰めていた。はあはあと肩を喘が
 せて、性のなんたるかを見極めようと必死になっていた。
  やがて腰の奥に切ない掻痒感が疼きはじめ、少年は、ああ、ああ、と声を漏らした。悶々と
 した衝動が興奮に駆逐され、その興奮の奥底から快感を求める本能が叫んでいた。もっと擦れ。
 精子を溢れ出させろ。でもなんのために――?
 「おねえちゃん、おねえちゃん……」
  疑問はなぜかそんな言葉になった。
  行為を見つめる彼女に、救援を請う視線が絡みつく。
 「あの、ど、どうしましたか? 苦しいんですか?」
  切迫した様子に、彼女はしどろもどりになりながら訊いた。どうにも下半身が落ち着かない。
 人目がなければ排泄のための個室に入り、いったいどうなっているのかを確かめたいくらいだ
 った。
 「き、きもちいいよ、きもちいいよう……」
 「きもち、いいんですか……?」
 「きもちいいよう……」
 「精子を出すのは、きもちいいんですね……?」
 「う、うわ、うわ、わわっ!?」
  びくびくびく、と少年の身体が痙攣した。
  かくん、と膝が折れ、それでも倒れずに、腰を突き出して擦りつづける。
 「ど、どうしましたか? あの、えっと、わ、わたしはどうしたら?」
  豹変におろおろと慌てた彼女は、思わず辺りを見回してしまった。助けになりそようなもの
 は見当たらなかった。
 「出る、出るよ、精子が出るよ、見て、見てておねえちゃんっ――」
 「え? あの、え? え?」
 「見ててッ!」
 「は、はいッ!」   怒鳴りつけられて、はたと姿勢を正してしまった。
 「う~~~ッ! きもちいい~~~~ッ!」
  少年は仰け反った。背骨のあたりからぞろぞろと蟲の大群が湧き出し、肛門を刺激して集結
 してゆく。それはすぐに体内に留まってはいられないほどに膨れ上がり、一気に尿道に流れ込
 んだ。
 「あっ――」
  半眼がくるりと白眼を剥き、心臓も停まらんばかりの腐れ爛れた快さが腰を満たした。
 「きゃ、精子!?」
  とぴゅん、とそれは噴出した。包皮の弛みを押し退けて、幼い精液は健気に飛んだ。
  彼女にとっては予想外の光景だった。まさか飛び出すとは思ってもいなかった。しかもどう
 やら少年意思とは無関係のようにだ。
 「で、出てますよ、精子。き、きもちいいですか?」
  つい訊いてしまうほど得体の知れない刺激に満ちた眺めだったが、少年は応えられるような
 状態ではなかった。うっとりと白眼を剥いたまま、びくくん、びくくん、と痙攣を繰り返して
 いる。
  呼応して、精液は何度も噴出した。とぴゅん、ぴゅるる、ぴゅ、と、遠く近く弧を描き、一
 部は芝生に覆われた大地に飛び散り、一部はぽってりと彼女の着衣に付着した。体温と共に立
 ち上るその匂いは、土のそれと同じようだった。
  最後に、少年はぺたんと尻餅をつき、開いた足の間から、ぴゅっとばかにり精液を吹き上げ
 た。
 「男のひとの赤ちゃんのもと、ぴゅうって飛んで、真っ白でぷるぷるしてるんですね……」
  ぷるんとした半固形物の様相を呈している濃い精液を浴びせ掛けられ、彼女は奇妙な悦びを
 感じていた。少年が、まるで自分に子供を産んで欲しいと、そう願っているような気がしたの
 だ。それに応えてあげたい、と心のどこかで感じて、それと同時に、どこか深い部分の内臓が、
 きゅ、と縮んだのを知覚した。
 「あんっ――」
  鼻にかかった甘い声が漏れ、彼女はぞくりと首筋を震わせた。彼女はついぞそれに気づかな
 かったが、心密かに彼女に恋焦がれたまま別れざるを得なかった幼馴染の若者がその声を聞い
 たとしたら、後先を考えずに想いを遂げようとしたかもしれない。
 「なにか――出ちゃうです――」
  と、両の手首のあたりで下腹部を押さえた。太腿を閉じていないと、なにかがとろりと零れ
 てしまうかもしれない。
 「お、おねえちゃん――」
  いつの間にか、その様子を少年が見上げていた。股間ではとろりと地面に精液の糸を引いた
 それが、未だ硬度を失わないまま、ぴくぴくと弾んでいた。
 「あ……」
  気づいて、わけもわからず彼女は恥じた。かあっと耳まで熱くなる。
 「あの、だいじょうぶですか……?」
  取り繕うように述べたが、少年は悲しそうに首を振った。横にだ。
 「ぜ、全然だめだよう……」
  その言葉に嘘はないに違いないと彼女は思った。だって、まだあんなに苦しそう……。
 「あの、わたしでなにかお役に立てるならば……」
  沈黙がしばらく続いた。
  少年がいった。
 「それじゃ、おねえちゃん、してくれる……?」
 「なにを、ですか……?」
 「ちんちん、いじってほしい……」
  切なくなるような願いだった。
 「わたしが、精子を出してあげればいいんですね……?」
 「さっき、おねえちゃんに抱きついて出したらすごくきもちよかったんだ……。見られながら
 出したときも、とってもきもちよかった……。あと、あと少しで、なんかわからないけど、あ
 と少しで……。きっと、おねえちゃんに出してもらったら……」
  少年はいっていた。精子が溜まると女の人に会いたくなる。きっと、だから、女性である自
 分が精子を出してあげれば、すべてが丸く収まるに違いない。
  彼女は納得して、尻餅をついたままの少年の背後に回り、そっと膝をついた。
 「えっと……」
  背中から、ふんわりと包み込むように少年を抱く。
  暖かい柔らかさが背中いっぱいに広がり、甘い香りが少年に届いた。
 「おねえちゃん、いいにおい……」
  うっとりとした声を聞きながら、彼女は少年の股間に手を差し入れた。
  手袋をしたままの指で、胸を高鳴らせながら、そっとそれを摘む。
 「うっ!?」
  びくん、と少年が跳ねた。
  とぷん、と尿道に残っていた精液が溢れる。
 「あ、あの、わたし、なにか間違えましたか!?」
  慌てて引っ込めた手を、少年が更に慌てて掴んだ。
 「や、やめないで、きもちよかったんだ、すごく!」
 「あ、はい――」
  再び摘み、おずおずと前後にしごく。
 「硬いですう……」
  ぽそりと呟いて、じっと見つめる。
  こりこりくにくにとした感触が手袋越しに指先に伝わってくる。ぬるついた精液と、滑らか
 に動く包皮の感触もだ。
 「あの、こうやってしこしこしてればいいんですか?」
 「う、うん、うん……」
 「いたく、ありません?」
 「き、きもちいいよ……」
  少年の頷きに力を得て、彼女はリズムを取りながら小刻みにしごく。
 「しこ、しこ、しこ、しこ、しこ」
  そういいながらだ。
 「もうちょっとはやく……」
 「あ、はい」
  速度を上げる。
 「しこしこしこしこしこしこしこ」
  彼女は愉しんでいた。理由は相変わらずわからないが、なにかとても楽しいことをしている
 のだという意識があった。しかも何物むにも代え難いほどの。
 「きもち、いいですか?」
  少年はこくこくと頷いた。
 「精子、出そうですか?」
 「あ、うううっ!?」
  少年が痙攣をおこした。
 「で、出る、出ちゃう、出ちゃうよう!」
  彼女は小さなそれを懸命に刺激する。
 「いいですよ、きもちよく精子を出してください」
 「ああーっ!?」
  とぷん、と三度目の射精がはじまった。
  自分の刺激でそれがおこったことに、彼女は陶酔した。
 「さあ、全部出してください、しこしこしててあげますから」
 「きもちいい、きもちいいっ――」
  嬉しそうに射精が続く。
  静かな空間にしばらく、少年と少女のあどけない性の好奇心が漂った。




  ありがとうおねえちゃん。そう言い残して、すっきりした顔を置き土産に少年が去ってから、
 彼女は一人考えていた。また溜まったらきてください。そう告げた自分の言葉の意味をだ。
 「なんだかあそこがぬるぬるしてます……」
  呟いて、また考えた。
  今夜ベッドに入ってから、きっと自分は密やかなはじめての行為をするに違いない。
  それがどういうことなのかは、わからないままにだ。




                                       つづく

bottom of page