

ラグナロク(脳内)オンライン
大番外編
『漁火』
男たちは飢えていた。
手入れが悪いせいで魚の鱗と臭いがこびりついた船はひどく小さく、大海原にあって、たっ
たそれだけの空間しか与えられていないことは、ひどく不公平に思えた。いっそ自分以外の二
人を海に放り出せたらと、三人がそれぞれに考えていた。凪も、ぎらつく太陽も、いっかな魚
の掛からない漁にもうんざりしていた。
男たちは、はみ出し者だった。三人共それぞれの仲間といざこざを起こし、船を追われた者
たちだった。漁師としての腕もなく、一人ではなにもできず、仕方なく廃船寸前の漁船を買い
入れて寄り集まっていた。一人残らず、俺は奴等とは違うと考えていた。
それでも、まがりなりにも魚が獲れているうちはよかった。陸に上がり、酒を飲み、肉を食
らい、女を抱いていれば、胸糞の悪い『仲間』との何日かに及ぶ船上生活にも、なんとか我慢
ができた。
ここ数週間、ぱったりと魚が網に掛からなくなった。金が底をついた。酒は呑めず、食事は
粗末になり、娼婦でさえ鼻先であしらうようになった。
鬱憤だけが溜まり、いまにも弾けそうになった頃合いに、一人が建設的な意見を述べた。皆
が賛意を示し、船は漁場を離れ、バイラン島の沖に辿り着いた。
「あんまり近づくなよ?」
髭面の男が言った。
「わかってるよ」
不機嫌そうに赤鼻の男が応えた。バイラン島には海底洞窟があり、そこから恐ろしい化物が
海に這い出してくるというのが専らの噂だった。いや、少なくともそれは男たちにとっては確
信だった。そうでなければこんなところには近寄らないし、過去数度に渡っての『漁』でもそ
れは実証されていた。
「どうだ?」
水平線に霞む島影から視線を移し、髭面が言った。
網を手繰り寄せていた長髪の男が、肩を竦めた。
「だめだな」
「もっと深いところまで沈めろよ」
「ああ」
応えて、長髪は網を放った。
しばらく待って、また網を手繰り寄せる。
「どうだ?」
今度は赤鼻が言った。
「お――」
長髪が唸った。
「きたか!」
「よし!」
たちまち三人が網に群がり、こればかりは素晴らしい速度で引き上げに掛かった。
網から伝わる振動に、長髪がにやにやと笑った。
「間違いねえぞ、こりゃ」
残りの二人も笑ったが、どうやらそれは卑しいだけだった。
海面下に、赤っぽい影が見えた。
「やったぜ」
赤鼻が今度こそ涎を垂らした。
髭面が撲殺用の棍棒を握り、船端から身を乗り出して待ち構えた。
がぼん、と海面が鳴り、次いで激しく飛沫を上げて泡立った。
「ようし、やっちまえ!」
「もう少し上げろ!」
「しっかり押さえろよ!」
怒号が飛び交い、髭面の棍棒が空気を切り裂いた。
ごん、という嫌な音がした。
それが三度続くと、海面は静かになった。
弱々しくもがくだけとなった獲物が引き上げられた。
ごろりと甲板に転がされたそれは網に絡まり、もぞもぞと蠢いた。
赤鼻が口笛を吹いた。
「やったぜ、こいつは子持ちだ」
すぐに全員で網から獲物を解放してやった。
仰向けに転がされたそれの長い髪が、海草のように広がる。ぱくぱくと声もなく開閉を繰り
返す口と、白い膜の掛かった無表情な眼が、ゆっくりと男たちの間を揺れた。
「気をつけろ、すぐにまた暴れ出すぞ」
髭面の言葉に、赤鼻と長髪がそれの両腕を押さえつけた。水掻きのついた三本指がぴたぴた
と甲板を叩く。
ごくりと喉が鳴った。誰のものかはわからなかった。
生白くぬめぬめと輝く乳房が、肉感を剥き出しに揺れていた。
「たまんねえ」
長髪が片手をのばして左の乳房を鷲掴みにした。
すぐに赤鼻が右の乳房に指を食い込ませる。
「あったかくてよ、ふかふかだぜ」
やわやわと揉みしだいていた指が乳房の付根を環状に握ると、ぎりぎりと締め上げた。
「……………!!」
それが仰け反った。
魚のそれと同じ外観と機能を持った下半身が跳ねまわり、びたんびたんと濡れた音を立てる。
くびれた乳房は赤紫に鬱血し、膨らんだ乳首からは血の珠が滲み出した。
「半分魚のくせに、なまいきにおっぱいなんかつけやがって!」
ぎゅう、と最後の力が加わると、ぴゅう、と血が糸を曳いて八方に散った。
びくびくと痙攣するそれの下半身に、ぱっくりと切れ目が走った。
どぱ、という炸裂音と共に産卵孔から噴出したのは、透明に輝く卵だった。それはあまりの
痛みに痙攣を繰り返し、命の危機に瀕しての本能なのか、胎内の卵を粘液と共に放出している
のだ。
「そら、全部出しちまいな!」
ぷっくりと膨れている下腹部に掌を当てると、髭面はそこを圧迫した。
次々に飛び出す卵は粘液に塗れ、ほかほかとした湯気さえ立てていた。
髭面がベルトを外し、ズボンと下着を脱ぎ去った。
既に影茎は赤黒く勃起していた。
「せっかく産んだ卵だ、無駄にするのも忍びなかろう」
ごしごしと擦り、自慰に耽った。
「よせよ、もったいねえ!」
慌てて長髪が卵を掴み取り、そのまま己の口中に放りこんだ。一粒で一杯になる。
ぶち、と潰して、内容物を嚥下した。
溜息をつき、うめえ、と言った。
「おまえも食えよ」
それの口にも押し込んだ。
反射的な行動なのか、それは自らの卵を噛み潰して飲み込んだ。
赤鼻は卵を握り潰して乳房に塗りたくり、ぬるぬるとした感触を味わっていた。
「うお――」
髭面が達した。
陰茎を卵に向け、濃い精液を放った。
「ほら――俺様の子種を――くれて――やらあ――」
うっとりと言いながら射精を続けた。
卵に精液が浴びせ掛けられた。
いつの間にか、長髪と赤鼻も下半身を剥き出しにしていた。どちらの陰茎も勃起している。
「おめえ、ちっと休んでろよ、俺がやるから」
長髪が言ったが、髭面はふざけるなと一蹴した。
「本番はこれからよ」
そのままそれの下半身を跨ぎ、未だ硬度を失わない陰茎の狙いを産卵孔に定める。
ひくひくと痙攣するそこに、陰茎が埋没した。
「ぐう――」
髭面が唸った。
「毎度のことながら、そのへんの女よりいいぜ、こいつのアナはよ」
ごつい尻が上下に動きはじめた。
産卵孔の中は熱かった。程よい締め付けがあり、内壁は滑らかだった。
「…………!!」
それの痙攣が激しくなった。
無表情な顔が桜色に染まり、口から泡を吹いた。
「感じてやがるぜ?」
赤鼻が言って、押さえ付けている腕の先、水掻きの部分に陰茎を擦りつけはじめた。
長髪は乳房を弄び、こりこりと勃起した乳首を転がしては悦に入っていた。
髭面は激しく腰を振りながら、
「そろそろだぜ、その瞬間になるとたまらねえんだ」
と涎を垂らした。
やがて、それの身体に細かな痙攣が間断なく走るようになった。
「きたぜ、きたぜ、きたぜ!」
腰の動きが更に勢いを増した。
「…………!!!」
びくうん、とそれが跳ね、背筋を仰け反らせた。
「ぐお――!」
産卵孔の内側が複雑に力強く蠢き、奥から熱い粘液が噴き出してきた。
粘液は僅かな隙間を滑り、陰茎に刺激を与えながら外界へと飛び散った。
その瞬間、最高の快楽の中で髭面は射精を行った。
産卵孔の奥底、更に奥底へと陰茎を突き入れ、そこで精液をたっぷりと放った。
しばらくそのままで余韻を味わってから、髭面はそれから離れた。
それの産卵孔はぽっかりと口をあけたままひくひくと蠕動し、桜色の内粘膜を晒していた。
「いく――」
それを眼にした赤鼻が精液を放った。
水掻きに精液が絡みついて、ぷりぷりととぐろを巻いた。
その機を逃さず、長髪がそれの下半身にしがみついた。髭面が素早く片腕を押さえ付ける。
「ううう……」
武者震いをひとつ、長髪の陰茎もぬるりと産卵孔に挿し込まれた。
すぐに律動が開始された。
「う~、う~、う~」
長髪は白眼を剥きながら、生肉の温かさと柔らかさを堪能した。
ひくひくと、またそれが痙攣をはじめる。
先を越された赤鼻が、それならばと言った。
「なあ、そろそろ食っちまってもいいか?」
「し、死なない程度にしとけよ…?」
長髪が腰を振り振り応えた。
「おうよ、俺はまだやってねえしな」
赤鼻はそれの乳房に口を寄せると、がっぽりと柔肉を頬張って噛み締めた。
「…………!!!???」
それが硬直した。
「おう、おう」
産卵孔が痙攣し、長髪が悶える。
赤鼻は顎に力を込め、犬のように唸りながら乳房を振り回した。
ぶつん、と皮が裂けるとあとは早かった。
食い千切られた脂肪層の跡も痛々しく、乳房は半ばから消失した。
「…………!!!!!!」
すぐに血の珠がぷつぷつと膨れ上がり、それは重なり合い、奔流となって溢れ出した。
そこに口を押し付けて血液を吸いながら、赤鼻は口中の乳房を咀嚼して呑み込んだ。おそら
くその部分の肉の味は人肉のそれと大差ないであろう。脂がねちゃつき、赤鼻は尿道に残って
いた精液をぴゅるりと漏らした。
「それなら俺はこっちだ」
言うなり、髭面がそれの片眼に人差指を突き立てた。
神経繊維の糸を引く眼球が抉り出されると、髭面はすぐに噛み砕いてしまった。
「うお、出るッ!?」
凄まじい痙攣がそれの身体を走り、それだけで長髪は果てた。たっぷりと精液を放ち、性的
興奮と快感に身悶えした。
すぐに赤鼻が長髪と場所を交代して挿入を果たした。
「ナイフ」
「ほらよ」
髭面が大ぶりなナイフを手渡すと、赤鼻は刃を艶かしい腹部に突き立てた。
産卵孔がうねり、腰を振るまでもなく陰茎をしごいた。
一気に縦に引き裂いた。
び、び、び、と肉と皮の裂ける音が響き、次いで血液と臓物が先を競うようにぷりぷりと零
れ出した。
赤鼻は腹腔に腕を突っ込むと、温かい内臓の感触を味わいながら、前回の『漁』で彼が発見
したある部分を刺激した。
「ひひ、ここをいじってやると、ほうれ」
青ざめていたそれの顔に血の気が戻った。
明らかに快感を得ていると思えるような桜色だ。
産卵孔も嬉しそうに蠢いた。
その間に、長髪も食事に取り掛かっていた。乳房といわず頬といわず、生肉を噛み千切って
は胃に納めた。そうしながら血に塗れた手で自慰に耽っている。髭面も黙々と咀嚼を続けてい
た。
射精が近づいたのを感じた赤鼻が、それの左胸にナイフを立てた。
「いくぜ?」
「おう」
「やっちまえ」
一息に刃が埋まった。
心臓を貫かれ、それは最後の痙攣に踊り狂った。
自動的に快感を与えてくれる産卵孔に、赤鼻の精液が溢れた。
余韻が消えるころには、それはぴくりとも動かなくなっていた。
それりで終わりではなかった。
男たちは肉を食らいながら、切り落としたそれの食道に、眼窩に、内臓に陰茎を挿入し、何
度も何度も射精を繰り返した。
やがて陽が落ち、微かな腐臭が鼻につきはじめたころ、男たちはもはや原型を留めないそれ
の死骸を海に投棄した。
満足しきった顔で寝転ぶと、誰かが言った。
「オボンヌ様々だぜ」
それの名は、そうしてまた陸の者たちに伝えられるのだった。
終